バスで10分も走ったでしょうか。ポイヤック村に到着しました。ポイヤック村はメドック地区の中心地らしく、ホテルやレストラン、土産物屋が並ぶ商業地区がありました。広大なジロンド川の脇には以前ワインの積出港だったと言われるヨットハーバーがあり、ちょっとしたリゾート地のような雰囲気がありました。ポイヤック村にはボルドーの5大シャトーと呼ばれる1級格付けのシャトーの内、シャトー・ラトゥール、シャトーラフィット・ロートシルト、シャトー・ムートン・ロートシルトという3つのシャトーがあります。ポイヤック村はまさにメドック地区を代表するワイン生産地という事ができるでしょう。
まず訪れたのは、シャトー・ピション・ロングヴィル・バロンとシャトー・ピション・ロングヴィル・コムテス・ド・ラランド(略してピション・ラランド)でした。道路を挟んで向かい合うようにそびえ立つ美しい2つのシャトー、特にバロンの方はボルドーの中でもトップクラスの美しさを誇る建物でした。建物の前には池があり、きれいに整備された庭園がありましたが、その地下には地上の穏やかな風景からは考えられない程、近代的なワイン醸造施設がありました。少しだけ見学させていただきましたが、ゆっくり見る事が出来なかったのが残念でした。
次に訪れたのはシャトー・ラトゥール。ボルドーを代表する1級格付けシャトーのひとつです。シンボルとなっている鳩小屋の奥に、まるで城壁のような建物がありました。重厚な門の前で砂利に覆われたぶどう畑を見ながら待っていると、門が開き、一人の人物が私達を迎えて入れてくれました。醸造責任者のピエールさんでした。ピエールさんの案内でシャトーの中へ入り、様々なワイン醸造施設を見て回る事ができました。ボルドーでいち早く取り入れられた近代的な発酵用ステンレスタンク、ぶどうの選果台、ワインの瓶詰め施設、プライベートセラー、そして圧巻だったのはワインの樽熟成庫でした。少しのゆがみもなく、きれいに並べられた何百ものワインの樽。通常、樽熟成中のワインは目減りした分のワインを継ぎ足す作業をするのですが、その際こぼれたワインの色素が樽に付着します。シャトー・ラトゥールでは、そのシミを目立たなくする為に、すべての樽の中央部分にあらかじめワインの色素できれいに色を塗っているのです。それが淡い光と闇のコントラストと相まって、見る者を圧倒する雰囲気を造り上げていました。
一通りの施設を見学し、テイスティングルームへと向かいました。真っ白な壁の清潔感あふれるテイスティングルームの一角に見覚えのある文字がありました。カタカナで書かれた賞状でした。なぜフランスのシャトー・ラトゥールにカタカナが?よく見てみると、明治時代の大日本帝国の高官から送られた物でした。さすがはシャトー・ラトゥールですね。明治時代からその名は日本でも知られていた訳ですから。この日振る舞われたワインは、シャトー・ラトゥール1999年、シャトー・ラトゥール2005年、セカンドワインのレ・フォール・ド・ラトゥール2005年、サードワインのポイヤック・ド・シャトー・ラトゥール2005年でした。2005年ヴィンテージは、その日に樽から直接瓶詰めされた物でした。帰国して得た情報によりますと、まだ販売用に瓶詰めされていないシャトー・ラトゥール2005年の先物での取引価格はボトル1本あたり約80000円になるとの事でした。それを考えたら良い年にボルドーを訪れる事ができて本当に良かったなと思いました。シャトー・ラトゥールは長期熟成型のワインです。2005年は2000年を超える良いヴィンテージだと言われていますので、飲み頃は数十年後になるでしょう。1999年も今飲んでもおいしく楽しめますが、まだまだ先が楽しみなワインです。次回はラフィットとムートンをご紹介します。
(タノリエ)
写真左より
シャトー・ピション・ロングヴィル・バロン
シャトー・ラトゥール
シャトー・ラトゥール樽熟成庫
試飲したシャトー・ラトゥールのワイン
左下:ポイヤックの街並み
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