回廊つながりでもう一題。
「回廊の長さ」についてお話します。
「レゾネイト」の客室、一番近いお部屋ではセンターハウスからほんの少しの距離ですが、遠いお部屋になるとかなりの距離があります。
トータル的に見ても、他の宿泊施設よりは「歩かされる感」があるかもしれません。
これも、「回廊の幅」同様、コンセプトに絡んだ「想い」があります。
その一つは、コンセプトの前半、「自然と人との共鳴」への「想い」。
この土地に鉄筋コンクリートの何階建てもある高い建物は似合いません。
(実は、計画の段階では、そういったスタイルの予定もありました)
国立公園内だけに厳しい環境アセスメントをクリアさせた結果、できあがった最終の計画は、「平屋建て」。
ところが、平屋建てでたくさんの客室を作ろうと思ったら、とにかく延々と地に這わせるように広げるしか方法がありません。
そこに建築家が取り入れたのが「村」の考え方。
「村」にはたくさんの家々が並び、その一つ一つが「道」に面して建ち、「道」で繋がっています。
「レゾネイト」で考えると、「客室」は「村」の「家々」、「回廊」は言わば、「村」の「道」と同じ役割です。
「村」の「道」だと思えば、長い距離も景色や変化を楽しみながら歩こう…という気持ちの余裕が出てきませんか。
もう一つは、コンセプト後半の「人と人との共鳴」への「想い」。
「回廊の幅」と同じく、同行者と歩く際、「会話」は付きものですね。
「会話」は人間関係を豊かなものにしてくれます。
それが「距離」が長くなれば、当然「会話」の「量」も多くなり、「仲」の親密度は増していきます。
せっかくこんな何もないところにわざわざ一緒に来たお相手なのですから、普段は慌ただしくてできない心からの「会話」をたくさんして欲しい、万が一、それが「言い争い」に発展したとしても仲直りさえすればむしろ「思い出深い旅」になる…と考え、センターハウスへのいわゆる「近道」は逆にできるだけ少なくしました。
また、回廊の中庭側の足元の高さに横木が施されています。
今では回廊と中庭の間に「塀」を作ってしまいましたので、お掛けいだくこともできないのですが、これは実は、長い回廊で時々休んでいただくための「ベンチ」の役割を担って作られたものです。
景色に浸りたければ腰掛ける、疲れたら腰掛ける、会話が弾んだら客室に入る前に腰掛けて自然の空気を楽しみながら話の続きをする…そんなお客様方の光景を思い浮かべながらデザインされたものです。
もう一つ、温泉からのお帰りの「湯冷まし」の役目…というヒミツもあるのですが、これから寒い季節に向かい、大切なお客様がお風邪を召されたら大変ですので、控えさせていただきます(笑)
最近は、お部屋までのご案内の間、ご滞在中のご説明しておくべきことも増え、なかなかスタッフとお客様の会話の場所とまではなっていない回廊ですが、お客様方同士では、是非、この長い回廊を歩きながらたくさんの会話を楽しんでいただきたいと思います。
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